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  • 2012.10.13 Saturday
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隻眼最終真相

 隻眼の少女とはなんだったのか、ネタバレ
 

隻眼の少女第二部の殺人は何故起こったのか? が問題でした。
流れを振り返ると第一部は、

岩倉(今鏡静馬?)が春菜を気に入らず? 殺害→事件のかく乱のために夏菜も殺害→みかげが事故で山科を殺害→秋菜はなにかを目撃したのか、秋菜も殺害→岩倉とみかげは互いに取引→影武者を使ってみかげがスガルを殺害

みたいな方向性になっていた気がします。こう見るとなんら証拠もない妄言に見えます。しかし、物証もアリバイもないこの事件は、そもそも作者の示した真相も妄言ではないのか。僕はただ自分の納得できる答えを探します。

さて、そもそも、第二部の殺害の理由は、みかげに父親はいらないから、となってますが、その最大の動機が、負うた子に教えられ浅瀬を渡るなんて恥ずかしいわ、の一言で解消されてしまいます。

 そんな説得ぐらいで納得するなら、最初から人なんか殺すかよ、と言いたい。

 つまり、動機になってないのです。

 では何故、第二部で殺人事件を起こしたのか?

 第二部の殺人事件の結果、誰が利益を得たのか考えて下さい。その結果何が起こったのか?


 A 静馬に娘みかげを引き取らせるために殺人は起きた


 もし、殺人事件が起きなければ、龍の首でみかげに出会っても、これからも頑張れよ、ぐらいで終わって、静馬は日高三郎として生きていったのは間違いないのではないか。あるいは引き取ったにしろ、先代みかげの影を重ねて、まだまだだ、まだまだだ、といい続ける山科と同じような人物になったのではないか?
 そもそも、静馬との最初の出会いも、そして父山科と母の出会いも、殺人事件だった。
 事件に巻き込まれその中で解決を行う困難と状況が、人を結びつけると母みかげが思ってもおかしくはない。そしてそれは、小説を読む読者にとってある種の真実性を持つ。確かに、事件が起きれば結びつかざるを得ないし、娘みかげを引き取らざるを得ないような、そんな気に現にさせられるではないか?

 つまり、それこそが目的なのである。

 母みかげは目が見えなくなりつつあった。(あるいは彼女は影武者で、娘みかげは影武者の娘?)
 このまま自分が盲目になれば、娘みかげには庇護者がいなくなる、まだ探偵としてデビューさえしていないのに。小母さんはいるらしいが、今後も娘が探偵を続けるなら厳しい事になる。

 娘にはセンセーショナルなデビューと、その結果としての庇護者が必要だった。

 本当の父親である岩倉(今鏡静馬)は、頼ることが出来ない状況にある。代わりの父親が必要だった。みかげは日高三郎として生きる種田静馬を知っていたのかもしれない。あるいは、久弥が使えないかと思ったのか、スガル村へ向かう。
 久弥は自分を匿ってくれたが、娘みかげを預けるには、琴乃家があるから若干微妙だった。そこで龍の首が壊れ、種田静馬がやってくる。
 打ち合わせ通りに娘はそこで静馬に出会い、母娘の自作自演の殺人劇が開始する。
 そう、

 娘みかげは、最初から全部知っていた。

 筋書き通りの推理劇があるだけなのだ。静馬をとりこめるかどうかだけの。
 最初に娘ではない、16歳と名乗ったのは、そう言った方が取り込みやすいかも知れない(恋心的なあれで)と思ったのと、咄嗟に、真実であるところの岩倉の娘としての年齢を述べてしまったのかもしれない。

 そして母親による茶番的殺人劇が起きる。その過程で、娘みかげは静馬に媚びる。しかしどうも、静馬は過剰に母に思い入れがあるようで、注意が必要だった。だから最後の真相解明時には釘を刺す形で、山科を憎んでいたとか、父親は必要ないと告げる。
 この時に、ついうっかり、あの頃は静馬(岩倉)に夢中だった、と言ってしまうが、その矛盾は気にされないし、岩倉の話は、それが真の父親であるが故に、できるだけスルーをするように口裏を合わせていた。
 犯人も探偵も二人して岩倉を無視するのはそのためである。
 また、父は名家で結婚を反対された、は単なる事実となる。

 あと、もしかしたら、咄嗟に山科を殺して、秋菜を殺した罪を死ぬ前に清算したかったのかもしれない。

 1、父親を手に入れる

 2、娘をデビューさせる

 3 過去の罪の清算

 の3つの目的で起きた殺人事件だったのである。父親が不要だ、と言った犯人が実は父親を手に入れるために事件を起こしていた、というのは趣もありそうだ。

 種田静馬は、最初から嘘を見抜けない男として書かれている、こうして、母に利用され、その娘にも利用され、娘みかげを引き取る事になった。だから最後のシーンは麻耶雄嵩らしい皮肉となるのだ。


 もう十分ご承知でしょうが、これらの推理には何の証拠も根拠もないが、作中の真実も同じくらい大した証拠も根拠もない、ただ自分が納得できるかどうかだけがある。

 僕にとってある程度納得できるのがこの形、というに過ぎない。

 しかし逆に言えば、自分が納得できる程度の形、というのは自分にとって何も驚きも発見もない。本当はもっと、隻眼の真相にあれこれ新説が欲しいと思っている。
 ただまあ、僕の結論もまた、誰かにとっては常識の外であり、ミステリの魅力は、自分の常識の外にある解釈が現れるところにあるのかもしれない──閉幕


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  • 2012.10.13 Saturday
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コメント
長文おつかれさまです。

結構、読み逃している部分もあったので
(疑問点として提出されている部分)
参考になりました。

麻耶雄高が、適当に書いた、という、
当たり前すぎる「真相」では、
やはりいけないんですよね^^;

個人的には、後期クイーンの作品を
読んだことが無いので、具体的にどういう形で
「問題」が提出されていたのか、知らないのですが、
「後期クイーン問題」というのは、なにかの
小説で読んでいたので、
「隻眼の少女」を読んで、「なるほど、
これがそれか」と思いました。

しかしこれ、犯人も探偵(もしくは推理マニアであり、
探偵はこのように推理する、という推測が可能な人物)
以外では、成立しないと思うのですが。

普通の犯人(推理知識が無く、探偵が、
「こう推理するだろう」という論理の組み立てが
できない人物)だった場合、成立しませんよね。
せいぜい、凶器を容疑者の部屋に放り込んでおくような
雑な「証拠過剰」パターンくらいだと思います。

さらに言えば、探偵がちゃんと、論理を
組み立ててくれないと成立しないわけで、
いわば、ちゃんと推理を組み立ててくれる「探偵」を
わざわざ事件に呼び込まないと、成立しない
犯罪(まあ、今回は自作自演ですが)
ということになります。
普通の犯人は、そもそも「探偵」は求めません。
殺人が起こったことにすら気付かれない、
というのがベストで。
容疑者が多すぎて迷宮入り。これがベターです。
わざわざ、探偵を呼び込んで、偽の真相を
看破してもらう、なんて面倒なことはしないんですよね。
そういう意味ではこの事件、「探偵」である犯人が、
「探偵」を求めた(自作自演ですが)という
事件ですね。

普通の犯人は「探偵」を求めませんが、
(捏造証拠なんて、残しません。殺して、埋めて、
行方不明、がベストです。そのため、ほとんどの
ミステリーは、突発的な殺人で、偽装工作の
時間がほとんどない、とか、
死亡を確認させて保険金が欲しい、とかになります)
この介入させたくないはずの「探偵」に向けて
証拠を残す、という矛盾を含む「後期クイーン問題」型
というか、「後期クイーン問題的な
問題を含む逆転、また逆転型ミステリー」
というのを作ろうとした場合、
この作品は、これしかないという感じの設定です
(探偵=犯人の自作自演。犯人は探偵を
必要とし、探偵も犯人を必要とする)。
だから、「後期クイーン問題」を含む
過去の実作って、どういう設定の話
だったんだろう?というのが気になります。
容疑者全員、推理マニアの、探偵志願者
とかなのでしょうか?

犯人に関して、物理的な証拠や、
絞り込みができていないじゃないか、
という指摘ですが、
これに関しては僕は、綾辻・有栖川コンビの
「犯人当てシリーズ」を散々見た結果、
「犯人当てに関しては、可能・不可能の
絞り込みをしなくてもいい」という結論に
達しました。
なぜなら、ほとんどの「犯人当て」ものは、
「可能・不可能」でいえば、ほとんどの
人物に犯行が可能で、アリバイの確定など
されないからです
(もしくは、きわめて杜撰に確定されます。
1・Aという場所にいたと言ったから、確定。
2・Aという場所にいたと言ったが、
そんな嘘はいくらでもつけるので未確定、みたいに
同じ条件でも、いかようにも、確定・未確定を
振り分けてきます)
で、結局「犯人当て」ものは、
その人物を犯人と絞り込む「それなりの理屈」
というものを探すゲームになります。
この理屈は、あまりにも短かったり、
ありふれていたりする場合は、不正解。
ちゃんと伏線を回収していれば、正解、
みたいなことになります。
まあ、要するに作者の恣意次第です。
(真相をだれが保証するのか、みたいな話は、
答えは簡単、作者です。作者が白と言えば
白。黒と言えば黒です)
そのため基本形としては、全員が容疑者で、
全員に犯行が可能。
しかし「この理屈」を使えば、「この人」を
犯人だと言える、というパターンで、
「この人にしか犯行は不可能」というものでは
ありません(犯行不可能型は、もっともフェアな
形です。時々そういうのもあります)。
まあ、ひどい例としては、有栖川有栖が、
「乱鴉の島」というので、この犯人当て型の
パターンを(物理証拠ゼロ、誰にでも犯行可能)
やってしまってましたが。「犯人当て」なら
ともかく、
普通のミステリーで、これは無いだろ、と
さすがに思いました。

さて、「隻眼の少女」ですが、
これは「証拠捏造」パ
  • 通りすがりです
  • 2011/10/26 6:59 AM
(つづき)

さて、「隻眼の少女」ですが、
これは「証拠捏造」パターンです。
で、犯人当てでは、これはあり得ません^^;
絶対に当たらなくなりますからね。
(本当の証拠か、犯人の捏造した証拠か、
それを保証するのが「作者」だけなら、
読者がそれを元に真相にたどりつくのは、
不可能です。あらゆる証拠、手掛かりが、
グレーになってしまい、意味をなさなくなります。
つまり、「犯人当て」なら、
やっちゃいけないパターンです)
だからまあ、この小説のいいたいことは
「当たるわけ無いよ」ということだと思います。
犯人が誰かを陥れるために、手掛かりを捏造
しだしたら(たとえば、耳が聞こえない人を
陥れるために、わざと目覚ましを止めない、とか)、
もはや「超推理」でしか、
真相は看破できないでしょう
(論理的裏付けのない、直観・断言型でしか)。
まあ、古畑などでは、しばしばそういう事件が
起こりますが(「死神博士」なんて、警察が
捏造してますからね。そこで捏造されたら、
普通は解けないんですが)
古畑の場合、犯人は大抵、ミスをしてくれます。
してくれなきゃ、解けないですから。
しかし、本編での、唯一のミスというのが、
左が見えないから、あえて左から見たように
装った、みたいな、論理性ゼロの部分だけです。
それ、結局、誰でもいいってことでしょ、という。
あとは、最後の犯人登場。古畑がよくやる
「罠にはめる」パターンですね。
結局、これだけで、途中での限定は、
無理なんですよね。
だからまあ、この話は、「解けるわけの無い」
話だと思います。
欲をいえば、ブログ主さんの推理は、
「こういう説明もつく」という理屈展開なので
できれば「こういう理屈」なら、「こいつ」しか、
犯人はあり得ない、という展開にしてほしかったです。
ただし、その篩い分けラインが、前述の通り、
微妙すぎて、「腹話術がばれないわけが無い」
これを、確定事項にしていいのかどうかとか^^;
確定事項の見極めができないんですよね…
(静馬はうかつだった、終了。ですから…)。
誰でも犯人にできるからこそ、強引にでも
「こいつ」しか犯人としてありえない、
という「理屈」をひねり出してほしかったです。

この小説の論理のたたみかけ部分、
霧舎巧の、小出し推理を、さらに発展させた
ような印象があったのですが、
やはり、霧舎の方は、解決まで、もっていかない
からこそ成立していたのであって、
解決まで持っていって、さらにそれを
覆すとなると、やっぱ袋小路的な所に
いき着くしかないんだな、という感じが
しました。
犯人が「そう思わせたい」をやりだすと、
ミステリーは成立しなくなって、
絶対解けないミステリーになるんだなー、
と(方向性は全然違いますが、「ガリレオ」の
科学知識トリックのように、普通に考えても、
絶対解けない型になるんだなー)と思いました。
「そう思わせたい」型の場合、
真相が無数に発生しちゃいますからね…。
まあ、「ガリレオ」のように、ミステリーっぽいけど、
ミステリーとはいえない「何か」として
楽しむ分には、ありなのかもしれませんが。
論理展開部分は、それなりに面白いですし。

  • 通りすがりです
  • 2011/10/26 7:21 AM
余りに期間があき、何を書いていいか分からなくなってしまいました・・・感想ありがとうございます!面白いコメントだなあ、とただただ関心することしきりです!
  • いぬがみ
  • 2012/09/21 10:27 PM
そんな説得ぐらいで納得するなら、最初から人なんか殺すかよ、と言いたい。
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